合同会社AHA TOKYO

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微細加工・高精度加工を動画で見せる5つの方法
拡大・比較・工程・測定・図解

公開日:2026年10月29日文:合同会社AHA TOKYO 代表 水元和夫

微細加工や高精度加工の会社が展示会の動画をつくるとき、「拡大映像は撮ったものの、何がすごいのかが伝わらない」と感じることがあります。

この記事は、微細加工・精密加工を手がける製造業の方に向けて、拡大・比較・工程・測定・図解の5つの方法を、撮影と編集の具体的な工夫に落とし込んでまとめたものです。目に見えない技術をどう考えるかという総論は、目に見えない技術を展示会でどう見せる?で紹介しています。ここでは、その次の段階として「実際にどう撮り、どう画面に載せるか」を扱います。

まず結論:「元の大きさに戻れる手がかり」を必ず残す

私たちは、微細加工の映像では、倍率の高さよりも見ている人が元の大きさを思い出せる手がかりを残すことを優先すべきだと考えています。

拡大映像は迫力がありますが、拡大するほど、見ている人は「これが実際にはどれくらいの大きさなのか」を見失います。5つの方法はどれも、この手がかりをどう残すかという観点で使い分けると、組み合わせ方を決めやすくなります。

なぜ微細加工は映像でも伝わりにくいのか

微細加工の映像には、撮影の段階で特有の難しさがあります。

  • 加工部が小さく、普通のカメラでは形が写らない
  • 金属の表面が光を反射し、形状より反射が目立ってしまう
  • 加工中は切りくずや加工液で、肝心の部分が隠れることがある

たとえば、直径0.1mmの穴を開ける加工を拡大して映しても、画面いっぱいに映った穴は「普通の丸い穴」にしか見えません。小ささを伝えるには、映像の外側に手がかりが要ります(数値は説明のための例です)。

方法1 拡大:倍率の数字より「スケールバー」を入れる

拡大映像に「×200」のような倍率を書いても、ブースの大きな画面とスマートフォンでは見かけの大きさが変わるため、実際のサイズを直感的につかみにくいことがあります。

  • スケールバーを入れる:「100µm」のように長さの分かる線を画面に入れておくと、どの画面で見ても大きさの基準が保たれます。マイクロスコープなどの画像を使う場合は、スケールバー付きで書き出せるか確認しておきます。
  • 段階的に寄る:部品全体 → 加工した部分 → 拡大、と2〜3段階で寄っていくと、どこを拡大したのかを見失いにくくなります。
  • 照明を変えて撮り比べる:同じ箇所を、照明の角度を変えて何枚か撮っておくと、反射が少なく形状が分かる映像を選べます。

方法2 比較:大きさが決まっているものと並べる

身近なものとの比較は、選ぶものによって伝わり方が変わります。

  • **大きさの基準になるものを選ぶ:シャープペンシルの芯のように太さが表示されているものや、硬貨のように見慣れたものは、比較の基準として使いやすくなります。
  • 個人差のあるものは注意する:髪の毛は分かりやすい一方、太さに個人差があります。使う場合は、実際に同じ画面に並べて撮り、「髪の毛の太さ」と断定する数字は添えないようにします。
  • 同じ条件で撮る:比べるもの同士は、同じ倍率・同じ照明・同じ角度で撮ります。条件が違うと、比較そのものが正確でなくなります。

比較を入れる場合は、「自社の従来品」や「一般的な加工の例」など、比較の条件を説明できるものを使うと分かりやすくなります。

方法3 工程:加工中が見えないときは「前・中・後」でつなぐ

加工中の様子は、切りくずや加工液で見えないことがあります。その場合は、加工中の映像に頼りすぎず、3つのカットでつなぎます。

  • 加工前:素材やワークを、加工する位置が分かるように映す
  • 加工中:機械が動いている様子を、少し引いた位置から映す
  • 加工後:同じ角度から、加工した部分を拡大して映す

加工前と加工後を同じ角度・同じ位置で撮っておくと、切り替えたときに「何が変わったのか」が分かります。早送りや減速をした映像には、「4倍速」のように速さを画面に表示しておきます。

方法4 測定:可能なら画面データを直接取り込む

測定結果は、測定機器の画面をカメラで撮ると、反射や画面のちらつきで読みにくくなることがあります。

  • **可能なら画面データを取り込む:測定ソフトから画面録画や画像を書き出せる場合は、直接取り込み、見せたい数値の部分を拡大します。
  • 規格値と並べる:「規格 ±0.005mm に対して、測定値 +0.002mm」のように、基準と並べると数値の意味が伝わりやすくなります(数値は説明のための例です)。
  • **測定機器と測定対象もセットで映す:画面の数値だけでなく、何を、どの機器で測っているのかも映しておくと、数値が何を示しているのか分かりやすくなります。

方法5 図解:実写と同じ角度で描く

形状の断面や内部は、図解で補います。

  • 実写の直後に、同じ角度の図を出す:実写から図に切り替えたとき、向きが同じだと見ている人が迷いません。
  • **寸法線は伝えたいものに絞る:図に寸法をすべて入れると設計図面のようになります。動画で伝えたい寸法だけを残します。
  • 公開してよい範囲で描く:顧客から預かった図面や形状をそのまま図にしないよう、社内で確認します。背景に顧客名の入った治具やラベルが映っていないかも、あわせて確認します。

15秒のカット割り例

微細穴加工を例に、5つの方法を15秒にまとめたカット割りです(内容は説明のための例です)。展示会の動画の一部に入れる場面や、SNSなどで使う短い映像を想定しています。

カット秒数映すもの画面の文字
10〜3秒部品の全体を、指先と一緒に映す「この部品の、ここに穴があります」
23〜6秒加工部分へ段階的に寄る拡大映像スケールバー「100µm」
36〜9秒シャープペンシルの芯と並べた拡大「芯よりずっと細い穴」
49〜12秒測定ソフトの画面を取り込んだ映像規格値と測定値を並べて表示
512〜15秒穴の断面の図解「奥まで同じ径で」

拡大で寄り、比較で大きさを取り戻し、測定と図解で裏付ける流れです。

よくある失敗

  • 拡大映像だけが続く:どの部品のどこを見ているのかが分からなくなります。全体のカットを最初に入れます。
  • 比較の撮影条件がそろっていない:倍率や照明が違うと、比較が正確でなくなります。
  • 測定画面をスマートフォンで撮影する:反射やちらつきで数値が読めないことがあります。

まとめ

微細加工・高精度加工の動画は、5つの方法を次のように使い分けると組み立てやすくなります。

  • 拡大は、倍率の数字よりスケールバーで大きさを示す
  • 比較は、大きさが決まっているものを、同じ条件で並べる
  • 工程は、加工前・中・後を同じ角度でつなぐ
  • 測定は、画面を取り込み、規格値と並べて見せる
  • 図解は、実写と同じ角度で、伝えたい寸法だけを描く

この記事を書いた人

水元 和夫(合同会社AHA TOKYO 代表)

八王子を拠点に、多摩地域の中小企業のAI導入・展示会準備を支援しています。