「うちの技術は、見た目では分からない」。製造業の展示会では、こうした技術をどう伝えるかが課題になることがあります。ミクロン単位の精度も、表面の仕上がりも、検査で不良を見つける力も、完成品を並べただけでは他社の製品と同じに見えてしまいます。
この記事は、精度・微細加工・検査技術など「目に見えにくい強み」を持つ製造業の方に向けて、展示会での伝え方をまとめたものです。結論は、「何が見えないのか」を先に見極め、それに合った見せ方を選ぶことです。
まず結論:見えないものは「比べて」「結果で」見せる
私たちは、目に見えない技術を伝えるときに、技術そのものを直接見せようとするより、比べられる相手と目に見える結果を用意するほうが伝わると考えています。
精度の高さは、別の状態と並べたり、測定結果を示したりすることで、違いが分かりやすくなります。検査技術は、何を見つけているのかと、その結果を見える形にすることで伝わりやすくなります。技術の説明から入るのではなく、来場者が「違い」に気づける場面をつくることが出発点です。
なぜ製造業の技術は展示会で伝わりにくいのか
展示会の来場者は、通路を歩きながら短い時間で各ブースを見比べています。その中で、次のような技術は特に伝わりにくくなります。
- 加工後の部品は、精度が高くても低くても、見た目はほとんど変わらない
- 微細な形状は、肉眼では形そのものが見えない
- 検査や品質管理は工程の途中にあり、完成品には表れない
たとえば、精密な切削加工を得意とする会社が完成部品だけを並べても、通りがかった人には「きれいな金属部品」としか映りません。強みが本当にあるのは、その部品の寸法のそろい方や、加工の難しさの側にあるからです。
「見えない」を4つに分けて考える
ひとくちに「見えない」と言っても、理由はいくつかに分かれます。どれに当たるかで、選ぶ見せ方が変わります。
| 見えない理由 | 例 | 合う見せ方 |
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| 小さすぎる | 微細穴、微細な溝、表面の粗さ | 拡大映像、身近なものとの比較 |
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| 差が小さすぎる | 寸法精度、ばらつきの少なさ | 測定結果、他の状態との並置 |
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| 中に隠れている | 内部構造、接合部、工程の途中 | 断面の図解、工程の映像 |
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| 起きなかったことが成果 | 検査による不良流出の防止 | 不良の実例と、見逃した場合の影響 |
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自社の技術がどの行に当たるかを、まず社内で話し合ってみてください。複数に当たる場合は、来てほしい相手にいちばん響くものを1つ選びます。
具体的な見せ方
拡大して見せる
微細加工では、拡大した映像や写真を使うと、肉眼では見えにくい形状を見せやすくなります。ただし拡大しただけでは大きさの感覚が失われるため、身近なものと並べる、拡大前と拡大後を続けて見せるなど、元の大きさが分かる工夫を添えます。
測定結果を画面に出す
精度は、測定している様子と結果の画面を見せると説得力が出ます。数字は1画面に1つに絞り、「その数字で何ができるのか」を一言添えます。数字だけでは、専門外の方には大きいのか小さいのかが伝わりません。
比べて見せる
一般的な加工品と自社の加工品、検査前と検査後など、並べて見せると違いに気づいてもらいやすくなります。比較の相手は、特定の会社の製品ではなく「一般的な状態」や「自社の従来品」にとどめます。
図解で中を見せる
内部構造や工程の途中は、断面図や工程の流れ図で補います。実写と図解を交互に使うと、「何を見ているのか」が分かりやすくなります。
60秒の構成例
検査技術を持つ会社を例にした構成です(内容は説明のための例です)。
| 秒数 | 見せるもの |
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| 0〜8秒 | 「この2つの部品、違いが分かりますか?」と、見た目が同じ部品を並べる |
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| 8〜20秒 | 拡大すると、片方に小さな傷があることを見せる |
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| 20〜40秒 | その傷を見つける検査の様子と、判定結果の画面 |
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| 40〜52秒 | 見逃した場合に起こりうること(組立後の不具合など)を図解で |
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| 52〜60秒 | 社名・強みの一文・小間番号・QRコード |
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問いかけで足を止め、拡大で「違い」に気づいてもらい、検査の映像で理由を示す流れです。
よくある失敗
- 拡大写真だけを並べる:何の部品の、どこを拡大したのかが分からず、抽象的な模様に見えてしまいます。
- 数字の羅列:公差や粗さの数字を続けて並べても、専門外の方には違いが伝わりません。
- 機密に踏み込みすぎる:工程を見せたいあまり、顧客の図面や工程の詳細が映り込むことがあります。映像は社内で事前に確認します。
会期の数か月前から準備全体をどう進めるかは、展示会の準備チェックリストにまとめています。
まとめ
目に見えない技術を伝えるときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 自社の技術が「なぜ見えないのか」を4つの中から見極める
- 比較できる相手と、目に見える結果を用意する
- 拡大・測定・比較・図解を組み合わせ、音がなくても伝わる構成にする
技術そのものを説明しきろうとするより、まず来場者が「違い」に気づける見せ方を考えると、その後の説明にも入りやすくなります。
この記事を書いた人
水元 和夫(合同会社AHA TOKYO 代表)
八王子を拠点に、多摩地域の中小企業のAI導入・展示会準備を支援しています。