展示会のブースで流す動画をつくることになったものの、「何から手をつければいいのか」「何を、どの順番で見せればいいのか」で手が止まっている方は多いのではないでしょうか。
この記事は、製造業・BtoB企業で展示会の動画を担当される方に向けて、60秒前後の動画を組み立てる手順と、そのまま使える構成の型をまとめたものです。編集を始める前に、まず「誰に、何を伝えるか」を一文に絞るところから考えていきます。
まず結論:先に「一文」と「見てほしい相手」を決める
私たちは、展示会動画でいちばん大切なのは、撮影や編集の技術よりも「この動画を見た人に、何をひとことで覚えて帰ってほしいか」を先に決めることだと考えています。
ブースの前を通る人が、立ち止まって最初から最後まで見てくれるとは限りません。途中の数秒だけを見て通り過ぎることもあります。だからこそ、どこから見ても同じ一文が伝わるように、全体をその一文に向けて組み立てます。
一文は、たとえば次のような形です。
- 「難削材の小ロット加工を、試作1個から引き受けます」
- 「検査工程の目視チェックを、画像検査で置き換えます」
社名や製品名から始めるより、相手の困りごとと、自社ができることを並べるほうが、通路から見ている人に届きやすくなります。
なぜ製造業の展示会動画は長くなりがちなのか
技術を持つ会社ほど、伝えたいことが多くなります。加工の種類、対応できる材質、設備の一覧、品質保証の体制、実績。どれも事実で、どれも大切です。
ただ、それを全部入れると、1本の動画が会社案内の読み上げになってしまいます。たとえば精密部品の切削加工を手がける会社であれば、「5軸加工機を何台保有」「対応材質は何種類」と並べるよりも、「ほかで断られた形状を、この工程で形にした」という流れを1つ見せたほうが、加工を発注する立場の人には伝わります。設備の一覧などの詳しい情報は、あとで渡す資料や紹介ページ(LP)に分ける方法もあります。
60秒動画をつくる5つの手順
1. 一文と相手を決める
前の章で書いたとおり、「誰に」「何を」覚えて帰ってほしいかを一文にします。設計・開発の方に見てほしいのか、購買の方なのかで、選ぶ映像も言葉も変わります。
2. 手元の素材を棚卸しする
新しく撮影する前に、すでにある写真・動画・図面(公開してよい範囲のもの)・カタログを集めて並べます。加工中の映像、完成品の写真、測定結果の画面など、一文を裏付ける素材がどれだけあるかを確認します。足りないものだけを、撮影やイラスト、図解で補います。
3. 構成を秒数で書く
いきなり編集に入らず、「何秒から何秒で何を見せるか」を表にします。次の章の構成例をたたき台にしてください。
4. テロップだけで意味が通るかを確かめる
展示会場では音が聞こえにくく、音を出せないブースもあります。ナレーションやBGMを付ける場合も、音を消した状態で見て意味が通るかを必ず確認します。テロップは1画面に1つの要点、遠くからでも読める大きさにします。
5. 実際の画面で見て直す
パソコンの画面で良く見えても、ブースの大型画面や、離れた位置から見ると印象が変わります。会場で使う画面に近い環境で再生し、文字の大きさと速さを確認してから仕上げます。
60秒の構成例
ここでは、精密加工を手がける会社の展示会動画を例に、秒数ごとの構成を示します(内容は説明のための例です)。
| 秒数 | 見せるもの | テロップの例 |
|---|
| 0〜5秒 | 問いかけ(図面や不良品のイメージ) | 「その図面、断られていませんか?」 |
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| 5〜15秒 | 相手の困りごと | 公差が厳しい、数が少ない、材質が難しい |
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| 15〜35秒 | 加工中の映像、拡大した仕上がり | 自社の強みをひとことずつ |
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| 35〜50秒 | 裏付け(測定結果、検査の様子、数字) | 数字は1画面に1つ |
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| 50〜60秒 | 社名・小間番号・QRコード | 「詳しくはブースで/QRから」 |
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ループ再生で途中から見た人にも伝わるよう、最後の画面から最初の問いかけに戻っても違和感がない作りにしておくと、どこから見始めても内容を追いやすくなります。
よくある失敗
- 社名のロゴから始まる:ロゴだけの画面が続くと、その間に通り過ぎられることがあります。最初から内容に入り、社名やロゴを最後にも表示する方法があります。
- テロップが多すぎる:1画面に文章を詰め込むと、読み終わる前に次の画面に変わります。
- 数字を並べすぎる:数字は説得力がありますが、続けて並べると印象に残りません。いちばん伝えたい1つに絞ります。
- 展示会でしか使えない作りにする:会期の日付を映像に焼き込むと、終了後に使いにくくなります。日付や小間番号は差し替えやすい最後の画面にまとめます。
展示会の前・当日・後での使い方
展示会動画は、会期中だけのものではありません。
- 開催前:招待メールや自社サイトの出展案内に載せ、ブースで何が見られるかを先に伝える
- 当日:ブースでループ再生し、説明員が話しかけるきっかけにする
- 終了後:お礼メールに、詳しい紹介ページ(LP)と一緒に案内する
出展準備全体の流れは、展示会の準備チェックリストにまとめています。動画をいつまでに用意すべきかの目安としてあわせてご覧ください。
まとめ
展示会動画は、次の順番で考えると迷いにくくなります。
- 「誰に、何を覚えて帰ってほしいか」を一文に絞る
- 手元の素材を集め、足りないものだけを補う
- 秒数ごとの構成表をつくり、音なしでも伝わるかを確かめる
- 会期後のメールや紹介ページでも使える作りにする
60秒前後でも、伝えることを一文に絞ると構成を組み立てやすくなります。まずは自社の一文を書き出すところから始めてみてください。
この記事を書いた人
水元 和夫(合同会社AHA TOKYO 代表)
八王子を拠点に、多摩地域の中小企業のAI導入・展示会準備を支援しています。